2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 ポチが死んだ。  ポチは隣の坂本さん一家が飼っていた芝犬だ。  よく吠える犬で、近付く者は誰彼無しに噛みついていた。  坂本さんの奥さん曰く、賢くて大人しい自慢の犬だそうだが、僕に言わせれば牢の中で飼うべき猛獣だった。  なので、坂本家に用があるときはしっかりとした対策が必要だった。例えば僕の場合、ゴムボールを投げて気を反らさせていた。勿論使い捨てなので、中々財布に痛かった。  そんなこんなもあって、いくら駄目犬であっても、僕はポチに多少なりとも愛着があった。  ポチが死んだ日、坂本さん一家は泣いていた。  僕もちょっぴり泣いた。  一週間後、坂本家にラブラドール・レトリバーがやって来た。名前はハッピーと言うそうだ。  毎朝彼らは楽しそうに散歩に向かう。  僕はとても寂しい気持ちになった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!