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「クゥ……たっ、大変だな!」
ハハハと乾いた笑いと虚ろな目をして遠くを見詰めるトモにクロは居心地悪くなった。
「―――…ねぇクロ、其処の人、誰?」
「ん? あぁ! コイツは‘cool’の…、
あー名前何てんだっけ?」
「知らねー。総長が連れて来たんだろ?」
呑気に炎に訊くクロに一同、脱力。
「クロってば!この人、明らかに拉致して来たよね? なのに名前くらい覚えてあげて!可哀相じゃんか!
それに人違いだったらどうすんのっ?」
ビシッとクロの足下に転がる人質に指を指して力一杯ツッコミを入れるトモにまたしてもあちこちから笑いが起こった。
この場で笑えないのは多分気を失ってるであろう人質の男とトモ、それに炎とロウだけだろう。
「総長、クゥ、彼は‘cool’の幹部で‘サクラ’ですよ。」
答えたのはいつの間にかそのサクラを見下ろす位置に立っていたロウだった。
肩につく長めの茶髪は左側だけ短く刈り込んだアシンメトリーになっていて耳の軟骨についた五連のリングが光を反射していた。
細いつり目と薄い唇がどことなく狐を連想させ、喧嘩も強いがチーム内でも狡猾な策士として畏れられている。
「ふ~ん。‘cool’のサクラさんねぇ…最近の不良さんは顔が良い人限定なの?
ちょっとヘコむんだけど………」
「いいえ。クゥはこのままでも充分ですが、まだまだかっこよくなれますよ!」
ロウはくっと口角をあげてトモの頭を優しく撫でる。この男がこんな仕草をするのもやはりトモ限定だ。
トモもふにゃふにゃと頬を緩ます。
中三にもなって頭を撫でられるのに違和感が無いのは決してトモの身長が156センチでロウが178の長身だからなんて事は関係無い。
……………筈だ。
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