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近頃いろんなチームや族を相手に暴れて無償無敗を誇る‘cool’の噂はトモの耳にも入っていた。
‘ブラスター’とは違って少人数ながらも択逸した精鋭揃いの‘cool’はあらゆる手を使って族潰しをするので有名だ。
彼らが現れるまでは小さな諍いは毎日の様に繰り返されてはいたのだが、実質上他チームを圧倒してトップに君臨する‘ブラスター’が抑止力として働いていたので割と大きな闘争は無かった。
それが不穏因子の‘cool’があっさりと崩してしまったのだ。
手当たり次第に的に賭けていき、負けたチームのメンバーを取り込む訳でも無く放置。
するとバラバラになった不良は更に少人数で連んで互いにぶつかり潰し合いを始めた。
最悪なのは自分のバックヤードの無くなった輩が己の力を誇示しようと躍起になる余り、犯罪にまで手を染める。
今ではこの街の治安も何もあったものではない。
「ふ~ん。それで炎があんなとこで清掃作業してたんだ!
クロも大変だったんだねぇ。」
一通り説明と言う名の愚痴を聴かされてトモはフムフムと頷いた。
「本当に大変ですよ。 私達にも私達なりのルールというか守り事があるものを…
たった五、六人の愚か者のせいで崩れてしまったんだからね。」
ロウは忌々しそうにサクラと呼ばれる男を見下ろした。
未だにピクリとも動かないその男は乱れた長めの前髪に顔が半分覆われているが、スッと通った鼻筋や形の良い口に顎のラインが綺麗な顔だと窺えた。
「………… そろそろ帰る。」
暫くサクラを眺めていたトモだったが、
ふいにぽつりと暇を告げた。
「「は?」」
「何で? まだいいじゃねぇか!」
突如の帰る宣言に幹部たちの視線がトモに戻った。
「だって………
この人、起きてるよ?
しかも携帯で仲間を呼んだみたいだし…
俺、喧嘩出来ないもん。じゃあね!」
トモは幹部連中に言うだけ言うとにっこり笑って店の裏口へ向かった。
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