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~side サクラ
張り詰めた店内にもかかわらず黙々とペンを動かすトモのいるブースだけ、切り取られた空間のようだった。
エル字型のソファーにはトモと、今は移動して座っているサクラの二人だけで完全に‘ブラスター’のメンバーから忘れ去られた状態だ。
「……… おい。」
「………………」
この奇妙な状態に落ち着かなくなったサクラはトモに声を掛けたが、トモは相変わらず課題に没頭していて返事も無い。
サクラは盛大に舌打ちすると店内を眺めて‘ブラスター’の動きを追った。
自分が捕まったのは偶然だった。
偶々見つけた族を潰す時の乱闘で仲間はバラバラにバラけてしまった。
だが自分の役割はやり遂げた事とそういう時は何時ものように落ち合う場所も決まっていたのでサクラは迷わずそこへ向かった。
その夜も、そう…
何事もなく仲間の待つ場所へ辿り着いて帰る筈だった。
「‘cool’だな?」
暗がりから声がして、内心しまったと思った時には遅かった。
振り向くより早く後頭部に重い衝撃を感じてサクラの意識は直ぐ闇に包まれた。
暫く後、気を失ってどの位経ったのか定かではないが、自分がどこか違う場所に移動させられていることが解った。
薄く目を開けて様子を窺うと、両手を後ろに縛られて横たえられているのはどこか屋内の床だろうか。
少なくとも地面では無い事にホッとして
サクラは気を失ったふりを続けながら辺りの様子を窺う事にした。
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