1371人が本棚に入れています
本棚に追加
.
酒の匂いやざわめきにかなりの人数が集っている。
所々聴こえる会話の内容からすると、
此処はブラスターの溜まり場で状況は極めて不利だ。
(何処か… たぶん、ブラスターの拠点にしてる‘スピリット'だな。何とかして奴らに……
………………ん?)
そこで派手な音と歓声に迎えられて誰かが入って来たのがわかった。
「クゥ」「ホムラ(炎)」と呼ばれている限り、店に入ってきたのは二人。
炎はブラスターでも喧嘩好きな武闘派として有名だ。だが…「クゥ」などと呼ばれる奴を情報屋と言われるサクラにも思い当たる人物は浮かばなかった。
(誰だ?)
気を失ったフリをしているのと、床に転ばされていて二人の顔が確認出来ない。
クロや幹部との会話でチームには入っていないみたいだが、そいつがなかなかブラスター全員に気に入られている事と、特に総長とNo.2のロウや炎に可愛がられているらしい。
(使えるかも…くそっ、どんな奴なんだ)
何とかして顔を見たいという願いが叶ったのはそれから直ぐだった。
悟られないように没収を免れた二台目の携帯で仲間に連絡を執ったのをクゥにバラされた後に漸く椅子に座ってみると自分の隣でソイツが呑気に問題集を解いていた。
驚いた。
サクラからしたら、クゥはまだ少年と言える幼さが残った子供だったから。
「…………おい 」
「……………」
(無視かよ!)
サクラが舌打ちしても、ましてや今当に店の内外で繰り広げられる喧騒をものとはせずに足をパタパタさせて、時折鼻歌を唄いながらスラスラと数式を書き連ねていく幼い少年に興味が湧いた。
二人の空間だけが異様な静けさに包まれている。
.
最初のコメントを投稿しよう!