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トモは鳴海のシャツの裾をクイクイ引っ張って合図した。これ以上サクラや生徒会の連中に絡まれたく無かったからだ。
伊沢にしても無口先輩にしても、アクが強すぎる。coolのサクラなんてもってのほかだ。ブラスターの一員で無くても関わりがあるトモはなるべく距離を置こうと思った。
「迷子のチビちゃんも無事に保護したっつー事だし、俺らはそろそろ新歓パーティーに戻るわ!
生徒会の皆さんもご苦労さんっした。会長にも宜しく言っといてよ!」
鳴海がトモを促して寮の玄関ドアを開けた時、追いかけるようにサクラが言った。
「なぁ、ここの生徒会のメンバーは全員、
coolの幹部だって事知ってたか?………こいつらだってメンバーだ。」
「サクラっ?! テメッ、何バラしてんだよ!」
伊沢の制止の声にもサクラは動じず坦々と語り掛ける。
トモは振り返りはしなかったものの、立ち止まってサクラの話に耳を傾けた。
「coolとブラスターはまだ膠着状態が続いてる。中には過激な奴らも居る………気をつけろよ。」
トモはクルリとサクラを見ると口角をゆっくり上げて笑みを作った。
「俺には関係ない話でしょ?
不良でも何でも無いのに巻き込まれるのは遠慮します。
この学園では平穏に過ごしたいって思ってるだけだから、出来れば俺の事はほっといてよ。」
「「「………。」」」
サクラは小さく息を飲んだ。
真っ直ぐサクラを見詰めるトモの口元は綺麗な弧を描いているにもかかわらず、全く笑っていない。
手足の先から体温を奪ってしまうような氷点下の眼差し。
凡庸とは程遠いトモの威圧にサクラは不覚にも畏れを抱いた。
ゾクリと震える背筋と心が幾ら警鐘を鳴らしても、トモの強い瞳を美しいと思わずにはいられなかった。
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