1371人が本棚に入れています
本棚に追加
.
今年の猛暑は異常。
連日続く熱帯夜に人々は苛立ちを募らせて
無闇に人や物にその憂さをぶつける。
ーーーーーー狂ってる。
都会のアスファルトの照り返しは陽が落ちても熱を放射し続けて人々を狂わせる。
「…暑い。」
額に浮かぶ汗をタオルハンカチでこまめに拭いながら一人の少年が呟いた。
背中に滲む汗が気持ち悪いと思いつつも少年はひたすら歩く。
彼の目的地は大通りに面する五階立てのビルだ。建物自体が学習塾というのが未だに信じられない。
ピカピカと銀に反射する外壁はオシャレなのかも知れないが、高い月謝と維持費という名の訳の解らないモノで少年の家の家計が圧迫されていて、少ない小遣いが更に目減りされると納得出来ないものがある。もちろん空調費は別途請求されている。
「ちくしょう…ただのビルに金掛けやがって!俺の小遣い返せってんだよ。」
たぶん全額返して貰ってもビルの窓ガラス一枚分にも満たないであろう事が少年のやるせなさを募らせる。
「貧乏一家が更に貧乏になったじゃないか。
うちのエンゲル係数、舐めんなよー。
これで高校落ちたら玄関でウ〇コしてやるかんな!」
などとバカバカしい事を呟く少年にはそんな事をする勇気は無いごく普通の少年A。
この後自分の身に降りかかる不幸を予見出来るはずも無かった。
.
最初のコメントを投稿しよう!