1371人が本棚に入れています
本棚に追加
.
炎のバイクに放り投げるように乗せられて着いたのは‘ブラスター’の溜まり場【spirit(スピリット)】の前だった。
再びヒョイと担がれて店に放り込まれればそこは眩いお花畑…
ではなく、極彩色の髪をした不良様がひしめき合っていた。
「「「「「クゥ!?」」」」」
バーンと派手な効果音と共に開け放たれたドアとトモを小脇に抱えた炎にに視線の集中砲火。
(イタい、イタいよ! 視線がイタタタ…)
「おっ、生きてたのか?」
「相変わらずちっちぇな!」
「二ヶ月ぶりじゃね?」
ズンズン店の奥へ進む炎を恨めしく思いながらも、あちこちから歓待の声を掛けられトモは少々照れくさくなった。
中には聞き捨てならないセリフも交じっていたけど……
炎は一番奥まったブースまで来るとトモをソファーに下ろした。
「もぅっ…炎ってば…強引なんだからっ!
クゥ、ドキドキしちゃった!」
キュルンとシナを作ってトモが言うと炎はフイと横を向いた。
「ククク…。久し振りだなぁ、クゥ!
元気そうじゃねぇか!ちっとは大きくなったのか?」
テーブルを挟んでトモの向かいに座っている男はチームの総長‘クロ’だ。
白金の髪に整った顔は如何にもモテ男の雰囲気を醸し出しているが、さっきから何故か炎を見てニヤニヤとにやけている。
「あれっ!? クロ居たんだ?
暫く見ない間に影が薄くなってて気が付かなかったよ~!」
「……っとにクゥは生意気なガキだな。」
泣く子も黙る‘ブラスター’の総長に軽口を言えるのは副総長の‘ロウ’とクゥだけだ。
クロを呼び捨てに出来るのも限られた側近数名のみで、例え幹部と言えども許されない。他の者が迂闊に話し掛けただけでもクロの重い拳が炸裂する事になるのだ。
故に周囲は二人の辛辣なやり取りにも笑って見守っている。
「お前さぁ、ちっとはここに顔出せって。
炎や他の奴らも寂しがってウザいんだよ。
マジで何やってたんだ?」
「ちょっとママンの命令で塾に通ってんだよね~。」
「ぁあ゛?」
「ママンってば蠅叩き持って追い掛けて来るんだもん!あれは地味に痛いよ?しかも虫を潰す目的で作られた物で叩かれるって言うのが…なけなしのプライドごと叩き潰されちゃう気がして泣いちゃうからね。」
.
最初のコメントを投稿しよう!