1人が本棚に入れています
本棚に追加
「…優しい世界にしたいから」
「優しい世界…?」
彼女は星空をどこか寂しげな瞳で見つめ静かに呟いた。
俺は首を傾げながら彼女に対して問い掛ける。
「そう、世界は今泣いているの。だから私は歌う。世界を少しでも優しくするために」
何を言っているのか分からない。
けど…。
その言葉を聞いた俺の胸は少しだけどよめいた。
いつの間にか雪は渇いた地面に積もりだし、俺は時計に目をやる。
「…歌、聞かせてくれてありがとう。もう雪も結構降り出したし、君も帰りな」
いつの間にかここにとどまってしまった事に気付いた俺は彼女にそう告げると服に着いた雪を軽く払い、出口に向かい足を進めた。
何やってんだろ俺は…。
そんな事を考えながら歩いてる俺は何となくであるが公園を出る間際、少し振り返ると女の子がいた場所に目をやる。
だが、そこにはもう彼女の姿はなかった。
まるで降り出した粉雪と共に消えてしまったかのように…。
俺は静まり返った園内を少し見つめると、悴んだ手をポケットに入れ自宅へと足を進めるのであった。
,
最初のコメントを投稿しよう!