冬の幻想曲

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かつて俺には最愛の恋人がいた――。 彼女と出会って互いを想い合うようになるのに時間はかからなかった。 今までの自分はどこへいってしまったのだろう? っと、想うくらい俺は彼女を愛した。 まだ当時大学に入学したばかりの俺であったけどその気持ちだけは誰にも負けたりしない。 若いから…なんて言わせたくなかった。 互いに互いを理解し、喜びを共有して時間をかけて解り合っていく幸せを肌に感じながら過ごす毎日。 俺のちっぽけで薄い人生の中で唯一の輝きを魅せた時であっただろう。 だけど… そんな幸せな時間に終わりは告げられた。 いつからか彼女の態度は少しずつ冷たくなっていき、俺は“それ”を何とか繋ぎ止める為に必死の笑顔を作る。 徐々に心が離れていく不安に胸を焦がし、どうしようもない哀しみが心に染み渡り充満していく。 そしてその笑顔は彼女の事を苦しめているなんて当時の俺は知りもしなかった。 俺は最後に彼女から告げられた言葉に頷くしかなかった。
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