冬の幻想曲

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園内に入った俺は辺りを見渡した。 少し雪の積もりかけた地面を歩くと俺の足跡がこの小さな空間に残る。 やっぱり誰も居ないか…。 そのまま入り口に振り返り公園を出ようとした時だ。 『―――――――。』 確かに聞こえた声にすぐさま振り返る。 そして俺は確信した。 これは“歌声”だと―――。 こんな時間に? しかもこの寒い中で? 様々な疑問は頭の中に浮かぶけれど俺はその声を辿るように歩を進める。 そして園内を少し歩くと俺は静かにその足を止めた。 「……なんでだよ。」 なぜか俺の瞳からは一粒の涙が零れた。 歌声を見つけたんだ。 俺の少し前にいる彼女は綺麗な星空に向かい、瞳を閉じながら歌う。 抱き締めたら壊れてしまうのではないかという華奢な体、月明かりに浴びせられた綺麗な髪。 よく分からない。 理解なんて出来ないし説明も出来ないけど、それはとても“哀しい歌”に思えたんだ。
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