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「なんも言わねーのかよ」
先輩の激しさが、真っすぐさが、僕の臆病な心を貫く。僕が好きになったこの人の本性。
「別れたいってことかよ」
この激しさに憧れた。この純粋で痛いくらいに強い想いに惹かれた。だからこそ、僕は先輩を求め、そして傷つく。
別れたくはない。僕は先輩が好きだ。失いたくない。絶対に。
でも、同時に別れなければいけないのかもしれないとも思っている。僕は先輩を傷つける。駄目にする。
「……は」
い、と答えようとして、キスに遮られた。さっき噛まれた傷が痛い。
「……拒まないんだな」
唇を離した先輩が言う。
「まだ期待してもいいってことか?」
僕はどうしたらいいかわからない。悩んでいたから、あんなことをしたのだ。こんな中途半端な気持ちで先輩と付き合っていたらいけないと思って。
「どうなんだよ? それとも、こんなに好きで、悩んでんのは俺だけなのかよ?」
「……先輩も、悩んでるんですか?」
初めてきいた。
「当たり前だろ。どうしたらリクが俺のところにいてくれるのかってことしか考えてねーよ」
「え」
「リクが俺のことを嫌いにならないかと心配だし、こういうことされると不安になる。だから今日も授業全部投げて、バイトも休んで駆け付けたんだろうが」
先輩も、不安になるのか。僕のことで。僕だけのことで。
「でも、どうして、今日……?」
そこは疑問に思った。別に暇な日でもいいのではないだろうか。
「4年だ」
「は?」
「俺たちが付き合ってから」
あ……。そういえば、今日だ。
「この前、俺が今日は無理っつったからそれでリクが怒ってるのかと思ったんだ」
「そんな、こと……」
気が抜けた。この人はそんなことで取り乱すような人だったのか。4年付き合っていて初めて知った。
「それに、答えも知りたかったからな」
「答え……?」
なんのですか、ときく前に先輩が言った。
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