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「4年前、俺がリクに好きだと言ったら、お前は『じゃあモノは試しで1年つきあってあげます』って言った」
そう言えば照れ隠しの延長で言った気がする。たいして覚えてないが。
先輩に告白されたとき、戸惑い以上に嬉しかった。
「で、俺たちはつきあって、その1年後に俺が1年経ったけどどうするかって聞いたら、リクは『それなりによかったのであと3年契約延長してあげます』っていけしゃあしゃあと答えやがった」
よく覚えているな、この人。あいにく僕は全く覚えていない。
「それで今日がその3年後。契約は今日で切れるけど、どうする?」
今ならもれなく永久愛情発生装置がついてくるが。と先輩は言う。あんまし上手い言い回しじゃないな。
「よく覚えてますね。僕記憶にないですよ」
「まぁそりゃそうだろな。だって初めて酒飲ませた時だったし」
今から3年前じゃ僕は高校卒業直後でまだ未成年だったはずだが。どうりで記憶ないわけだ。
僕はため息を一つつく。
駄目なのは僕の方だ。何を言っても、結局はこの人から離れられそうにない。
「その契約、あと5年延長でお願いします」
僕の言葉に、先輩が嬉しそうに笑うのがわかる。
そしてムカつくほど簡単に僕を捉えて放さない。
「お客様。契約延長に伴い料金が発生致しますが」
悔しいが認めざるを得ない。僕は一生この人から離れられない。
先輩の胸倉を掴んで、今度は僕から口づけた。
――Fin――
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