※あと5年(薔薇)

7/7
前へ
/81ページ
次へ
「4年前、俺がリクに好きだと言ったら、お前は『じゃあモノは試しで1年つきあってあげます』って言った」  そう言えば照れ隠しの延長で言った気がする。たいして覚えてないが。  先輩に告白されたとき、戸惑い以上に嬉しかった。 「で、俺たちはつきあって、その1年後に俺が1年経ったけどどうするかって聞いたら、リクは『それなりによかったのであと3年契約延長してあげます』っていけしゃあしゃあと答えやがった」  よく覚えているな、この人。あいにく僕は全く覚えていない。 「それで今日がその3年後。契約は今日で切れるけど、どうする?」  今ならもれなく永久愛情発生装置がついてくるが。と先輩は言う。あんまし上手い言い回しじゃないな。 「よく覚えてますね。僕記憶にないですよ」 「まぁそりゃそうだろな。だって初めて酒飲ませた時だったし」  今から3年前じゃ僕は高校卒業直後でまだ未成年だったはずだが。どうりで記憶ないわけだ。  僕はため息を一つつく。  駄目なのは僕の方だ。何を言っても、結局はこの人から離れられそうにない。 「その契約、あと5年延長でお願いします」  僕の言葉に、先輩が嬉しそうに笑うのがわかる。  そしてムカつくほど簡単に僕を捉えて放さない。 「お客様。契約延長に伴い料金が発生致しますが」  悔しいが認めざるを得ない。僕は一生この人から離れられない。  先輩の胸倉を掴んで、今度は僕から口づけた。 ――Fin――
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

74人が本棚に入れています
本棚に追加