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「先、輩?」
先輩がかがんでいるのか、耳元で先輩が囁く。
「人が何かを忘れるのは真理だけど、それはその記憶がいらないからだ。人は忘れると同時に新しく記憶もできる」
先輩……?
体温と声が心地よくて、離れたくはないけど抱きしめ返すことはできなかった。
「人は大切な記憶は忘れない。傍にいれば忘れる以上に記憶が増えていく」
「どういうことですか?」
言ってることはわかるが、何が言いたいのかがわからない。
僕は尋ねた。
「だから、ずっと傍にいればいいってことだろ」
さらりと言われた言葉の意味を理解すると同時に、顔がほてったのがわかった。
「……そんなこと平然と言わないで下さい」
「それが俺だからな」
またもやさらりと返される。
僕はこの人に勝てる気がしない。
こっそりとため息をつき、縋るように抱きしめ返した。
――Fin――
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