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『…ッなんでもっと早く…』
『…いやいいんだ』
『ッ…』
春の割には湿っぽい空気で、
やっぱり短いようで長い俺の初恋
『高校、頑張れな』
『…それと、手袋ありがとう』
それだけ言って名残惜しく赤いボタンを押した
君の表情はわからないけれど、君の笑う顔だけ思い浮かぶ
俺には可愛すぎるあの手袋は妙に温かくて、優しい香りがしてたから
本当は素直になりたかった俺は誰よりも情けなくて、腹立たしいけれど
君が教えてくれた初恋は苦くて、だけど止められない
仄かに光る火種のように儚くて
なんだかセンチメンタルで
今でも煙草を吸う度に思い出す、
あの子。
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