煙草の子

4/19
前へ
/31ページ
次へ
塾の入ったビルの前で躊躇する俺の足 初めて出来た目標を捨てる気も無い俺の心 ピリピリとした寒さに耐えかねた俺の指先がエレベーターのボタンを押した。 『…あれ?ここの塾、通うの?』 後ろから声がした。 七年も聞いては、また聞きたいと思った声 話しては、一喜一憂した声 俺が世界で一番大好きな声 振り返らなくても、誰だか解った、 けど、わざと驚いた表情で振り返る。 『あたしもなの。』 その綺麗な声は 何でくすぐったいの もしも心臓が動く回数で死ぬと決まってるなら たぶん俺は 早死にすると心底思った そんなんで浮き足立っちゃって やっぱり エレベーターの中なんて覚えてない。 .
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加