さん

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半年後。 「オヤジさん、お世話になったね」 「いえ、こちらこそ光栄ですよ。勇者様御一行がお泊りになられるなんて・・・(やったっ!やっと出て行ってくれるっ!)」 主人、心の中でガッツポーズ。 「じゃあ、行くわ」 「お気を付けて・・・(早く行けっ!行ってくれっ!)」 「ええ、ありがと。帰りには寄るから」 「・・・え?」 宿屋の主人、心の中のガッツポーズがヘロヘロになる。 「さーて、魔王も少しはマシになったかしら」 戦士、歩きながら独り言。 「そう簡単に死なれたらこっちも困るのよね。勇者の役得っていうのは人々に崇められる事だから。魔王を倒した後はさーっと人気もなくなって、ただの村人に逆戻りだし」 僧侶・剣士・魔法使い、何故あの時に戦士が魔王を蘇らせたかの訳が分かった。魔王を生き返らせなければ、戦士との縁は切れたかもしれない。そう思うと心底悔やまれた。 「バカね、あいつまだ」 戦士、呟く。 『ここは怪しくない。伝説の剣なんてない』 ヘナチョコな字で書かれた看板が立っている。 「この洞窟に入れって言ってる様なもんじゃないのよ。この字は魔王が書いたのね。あのバカでかい手で筆を使えば誰だってこんなヘナチョコな字になるわよ。魔法で書けないって事はまだ使えないのかしら。それとも魔法で書けるって気付かなかったのかしら。まぁ、どっちにしてもまだバカのままね、あいつ」 「じーさん。あんた昔は賢者だったなら、少しは攻撃呪文使えるわよね」 「え、ああ」 「穴の中に向かって一発」 「は?」 僧侶・剣士・魔法使い、意図が読めない。
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