第二章(上)

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   店内には、老夫婦と四人家族がいただけで、沙織たちを含め八人の客がいた。あまり知られていない、いわゆる穴場なのだろう。  若い娘に案内され、二人は窓際の席についた。先ほどまで別の客がいたのか、店主と思われる小太りの男は、せっせとカウンター席を片付けている。   「雰囲気の良いところでしょう? お気に入りの店なんです」   「ええ、とても。何だか安心しました」   「うん、安心?」成嶺は不思議そうに小首を傾げる。   「だって、高級レストランとかに連れて行かれたら、どうしようかしらと思って……」    沙織は小声で、成嶺にそう伝えた。服装や化粧などに、全くこだわりの無い沙織は、そういった類の店が苦手だった。それに勿論、財布の心配もあった。   「なるほど、僕もそういった店は苦手です。なにしろ、メロンソーダが無いですからね」    どうやら成嶺は、メロンソーダを好むようだった。すべてがすべて、メロンソーダを置いていないとは限らないが、少なくとも彼の中では「高級」と「メロンソーダ」が一致する関係ではないらしい。  沙織は、若干年上である彼のことが、どうも子供らしく可愛らしくも思えた。  
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