第二章(上)

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   街中には色とりどりのイルミネーションが施されている。  車内から見た景色は、やがて訪れるクリスマスを否応無しに感じさせていた。    バスは、ちょうど沙織の住むマンション前に停車する。  この御時世、夜道を女一人で歩くのは危険だ。そんな沙織にとって、この好条件はありがたいものだった。  沙織が住まうマンションを選ぶ際に、それが大きな決め手となったのは言うまでもない。   「ただいまあ」    誰もいない部屋に、沙織は寂しく呟いた。  沙織には、たとえ一人暮らしであっても、なぜか「ただいま」と言ってしまう癖がある。  根っからの寂しがり屋なのかもしれない。    ただ、今夜は違った。    キッチンの方から、かたかたと音がした。  誰もいないはずの暗闇から、床の軋む音も聞こえた。    ――誰かがいる。    沙織は直感的に、そう思った。食器が倒れた音や、自然に生じる音ではない。間違いなく、そこに誰かがいる。    沙織は酔った頭をフルに回転させ、キッチンの方へと足を忍ばせた。  
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