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昼間に食べたラーメンが辛かったのか、臼井は先ほどから、熱々のコーヒーを何杯も飲み続けていた。
会議が終わり、大沼は両肩をほぐしながら、臼井の頭を軽く叩いた。
「コーヒーの飲み過ぎは体に良くない」
「大沼警部。佐藤潤一の死因は、マンションから飛び降りたことによる即死、で合ってますよね」
「ああ、そうだ」大沼は目頭を押さえたまま、そう答えた。
「事件当日、佐藤潤一は何者かを殺害した後、自宅マンションから飛び降り自殺をはかった。しかし、その殺害された何者かの死体は見つかっていない」
「その通りだ」
「それはつまり……その“何者か”の存在が不確かであるということ。ですよね、警部殿」
「おまえは何が言いたいんだ」
「佐藤潤一以外に死人が出たという証拠は、全く無いわけでしょう? むしろ、その何者かが佐藤潤一を殺害した。そんなシナリオも、十分に考えられるわけですよ」
臼井は紙コップをゴミ箱の中へ放り込むと、椅子にかけてあった黒のコートを手に取った。
大沼のコートだった。
「佐藤潤一が仕事場から帰宅する際には、必ず電車に乗らなければならない。さて、行きましょうか、警部殿」
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