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十二月十日。クリスマスにはまだ早い時期であるというのに、駅前の広場では、既に飾り立てられたクリスマスツリーや特売の文字が、人々を賑わせていた。
その様子を、臼井は不機嫌そうな面で眺めていた。
「日本人ってのは、本当にイベント事が好きだなあ、おい」
「ええ、そうですね。まあ、悪くはない」
臼井は大沼の方を一瞥すると、再び、広場の中心に陣取るクリスマスツリーに目をやった。
「おっ? てっきり、おまえさんは嫌う“くち”だと思ってたが」
「捜査の邪魔になるのであれば、嫌うくちになるでしょうね」
「おうおう、そうかい」大沼は納得したように、小さく二度頷いた。
「佐藤潤一が、帰宅途中で何者かと接触したのであれば、駅付近である確率が高い」
「ああ、恐らくそうなるだろうな。ここから佐藤の自宅まで、そう遠くはない。せいぜい歩いて十数分……となれば、目撃情報を集めるしかないわな」
「そうなりますね。頑張ってください」
「おいおい、頑張ってくださいってことは、俺一人でやらせるつもりか!?」
しかし、臼井が否定しないのを見る限り、大沼は苦笑するほかなかった。
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