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「ええ、まあ、構いませんが。ただ、あの子が帰ってくるのは、クラブ活動が終わった後ですから、夜七時くらいにはなりますよ。それまで随分と時間がありますけれど」
彼女はそう言って、携帯電話で時刻を確かめた。
「夜七時ですか、わかりました。では、その時間になりましたら、お宅にお邪魔してもよろしいでしょうか? えっと、お住まいは……」
大沼は遅ればせながら警察手帳を見せると、そう尋ねた。
彼女は物珍しさからか、大沼の手帳をまじまじと見つめる。
まるでそれが、偽物ではないかと疑っているかのように。
そんな彼女の様子を見て、大沼は苦笑した。
「ええ、家はすぐそこを曲がって……あっ、『やたのうち』と書かれた看板が見えるでしょう? 居酒屋なんですけどね。あそこです、あれの二階が家になってます」
やたのうち、と書かれた小さな居酒屋が見える。その店の二階スペースが、彼女らの住まいになっていた。
大沼は彼女に礼を言うと、そのまま駅の方へと駆け足で向かった。
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