499人が本棚に入れています
本棚に追加
――そこで、佐藤の記憶は途切れていた。あのまま彼は、堀田に付き合わされ、酔いつぶれてしまったのかもしれない。彼が目を覚ました時には、自宅のソファーの上に寝そべっていたのだ。
背広には、べっとりと赤い染みがこびり付いていた。
「ううん、あれ?」
酔ったまま帰宅したにしては、部屋が酷く荒らされている。床に散乱した雑誌や、真っ二つにひび割れた灰皿。背広の“赤い染み”は、どうも乾ききっていない。
さらに、部屋の片隅には何かが転がっていた。
「……あ、ああっ!? ほっ、堀田さん? 堀田さん!」
そこには、頭から血を流し、胸にいくつもの刺し傷を残した堀田の姿があった。その変わり果てた姿は、一見しただけでわかる。堀田まさよしは死んでいるのだ。
佐藤は警察に電話しようとしたのか、すぐさま受話器を取った。しかし、受話器を取ろうとしたその右手には、血で染まった包丁が握り締められていた。
最初のコメントを投稿しよう!