序章

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         ――そこで、佐藤の記憶は途切れていた。あのまま彼は、堀田に付き合わされ、酔いつぶれてしまったのかもしれない。彼が目を覚ました時には、自宅のソファーの上に寝そべっていたのだ。  背広には、べっとりと赤い染みがこびり付いていた。   「ううん、あれ?」    酔ったまま帰宅したにしては、部屋が酷く荒らされている。床に散乱した雑誌や、真っ二つにひび割れた灰皿。背広の“赤い染み”は、どうも乾ききっていない。  さらに、部屋の片隅には何かが転がっていた。   「……あ、ああっ!? ほっ、堀田さん? 堀田さん!」    そこには、頭から血を流し、胸にいくつもの刺し傷を残した堀田の姿があった。その変わり果てた姿は、一見しただけでわかる。堀田まさよしは死んでいるのだ。    佐藤は警察に電話しようとしたのか、すぐさま受話器を取った。しかし、受話器を取ろうとしたその右手には、血で染まった包丁が握り締められていた。  
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