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「あのさぁ、早苗って隆也と付き合ってるのか?」
少し酔っているのか、トロンとした目つきで柳瀬が聞いてきた。
この時点ではまだ付き合ってはいなかった。隆也の気持ちを掴めずに歯がゆい思いをしていたときだ。だから柳瀬にはっきりと応えなかった。
「黙ってるってことは、俺にもまだ余地はあるのかな?」
「あ、それは……」と言いかけて目の端で美晴たちが戻ってくるのが見えた。美晴がもう長いこと見せてくれなかった笑顔で私を見ている。私はこの笑顔を二度と失いたくない。
「柳瀬、私隆也さんの事好きなの。お願いだから力かして」
美晴だけではなく、まわりの知らない客までもが振り返るぐらいの声をあげた。
柳瀬は面食らっていた。自分の気持ちを思いっきり飛ばされたのだ。へこむ暇もなかっただろう。
「やだ、早苗って隆也さんだったのぉ? この前柳瀬君に紹介されたばかりなのに」
美晴は楽しそうだった。人の恋愛に首を突っ込むのは、最初は楽しいものだ。
隣で聡子も、へぇ~という顔をしていた。
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