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面食らっていた柳瀬が、やっと声をだした。
「そ、そうか。だったら……わかった。何とか探ってやる」
柳瀬、ごめん。私は心の中で詫びた。柳瀬は純粋だった。私は自分の都合を優先して彼を傷つけた。
少し落ち込んでいる風な柳瀬に美晴が声をかけ、そのあと二人でいい感じになった。
良かった。これで二人がうまくいってくれたら。
聡子と目が合った。同じことを考えていたのだろう。
私はもう一つ過去を変えたかった。
居酒屋を出てみんなと別れ、その足で実家に向かった。玄関を開けると、父が渋面をしてお説教を始めた。横で母も呆れたような顔で座っていた。
怒られながら、私は元気な両親に会えた嬉しさに涙が出た。
「泣くことはないだろう。社会人になったからって、もうちょっと考えて行動しなさい」
そういうと、父も母も居間に戻りテレビをつけた。
父は焼酎を飲みながら、煙草も吸っていた。
母は大福もちを一口かじった。
この時点で父の癌はまだ小さかったはずだ。母の糖尿病もまだ軽かったはずだ。
「二人も体に良くないことばっかしてるんだから、少しは健康を考えてね。お父さんは病院行ってちゃんと検査うけてよね。お母さんも食事食べ過ぎないこと。でないと、孫を見れないまま逝っちゃうよ」
私の言葉に二人はキョトンとした表情になった。
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