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9時頃に来てくれることになった。私から行けないから助かった。
あと実家に電話してみよう。母が生きているのがまだ信じられない。父も生きているだろうか。電話番号変えてることはないだろう。
震える私の声とは反対に軽やかな母の声がした。
「はい、あら早苗? さっきはごめんね。今日は日曜だったわね。起こさなくて良かったのに。これから有希さんと出かけるんだけど、今度生まれる子のものをいろいろ買いにデパートへね。あらっ、お父さんまたトイレ?もう出ますよ」
父も生きていた。トイレに入ったようで声は聞こえなかったが、たぶん大丈夫なのだろう。
本当に二人とも生きている奇跡に体がまた震えた。
しかし、有希さんと出かける?弟夫婦と一緒に暮らしているみたいだ。今度生まれるって……。あのあとにできたのだろうか?
私の心の疑問が聞こえたように母が話を続けた。
「有希さん二度も流産したけど、そういうあとこそできるものなのねぇ。あんたが、孫を見れずに逝っちゃうなんて脅すから、頑張って長生きしたのよ。弟の子が先に見れると思ってなかったけど、あと少しだから楽しみよぉ。あんたもあれだけ豪語したんだから、早く身を固めて孫みせなさいよ」
母の声は懐かしく心に響いた。けれど母が話す内容は、今の私の立場は非常に悪いし、仕事のことを聞けばもっと話は長引きそうだったので弟を呼んでもらった。
「なに? 仕事休みだからって、うちに飯食いに来るの?
声優の仕事してるったって大した稼ぎにならないの? でも好きで選んだんだからしょうがないよな」
まだ眠そうに話す弟の言葉に息を呑んだ。
声優? 私が?好きで選んだ?
??????
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