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「あ、あの、赤ちゃん無事に生まれるといいね。き、今日別に行かないから、そっち」
自分が今している職業が本当ならありえないことに戸惑いながら、普段余り使わない頭をフル回転させて、とにかく細切れに話を合わせた。
「ああ、ありがと。じゃ、母さんに言っとくよ。生まれたら連絡するよ。祝いくれよな」
弟も半分分かったか分かってないまま合わせたように応えた。
「わ、わかってるよ」
私はぶっきら棒に電話を切った。でも、よかった。幸せにやってる。
私以外は……。
9時10分。玄関のチャイムがなった。
それまでの間、私は部屋を片付け、とりあえずお茶の準備だけして待っていた。
「ごめんごめん、おくれちゃった。駅から走ってきたんだけど」
ドアを開けると、美晴と柳瀬が息を切らせながら立っていた。
「走ってこなくても……。ありがと。入って」
とにかく二人を中に入れた。でも頭の中はまだもやもやと霧がかかった状態だった。
珈琲を淹れながら二人の様子をみていた。
子供はまだいないといっていたが、その分凄く仲がよさそうだった。ここにも幸せが溢れていた。よかった。よかったのだけれど、私はどうなるのだろうか、この先。
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