まさかの夢

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「で、どうしたの?」 ソファに腰掛けて、やっと息遣いが落ち着いた柳瀬が昔のまま気さくに訊いてくる。 「そうよ。仕事一筋の早苗が心細い声で電話してくるなんておかしいよ」  柳瀬の隣に腰掛けた美晴も、出した珈琲カップに口をつけながら言う。    私はいま声優をしている。結婚もせず、生活に困らない程度には稼いでいるようだ。ならば、聞きたいのは隆也のことだけ。 「柳瀬、隆也って今何してるの?」  私のこの言葉に二人は顔を見合わせた。  口を開いたのは美晴だった。 「あのさ、早苗?あんた、納得したんじゃなかったの?キッパリ諦めて仕事にうちこんでるんだよね?」  キッパリ諦めて……何を?    たぶん、納得のいかない顔を露骨に出していた私に柳瀬が、分かりやすく解説する先生のように言った。 「俺がおまえの気持ち伝えたんだけど、あいつ、俺のこと考えて……早苗とは付き合わないって断ってきたんだ。早苗にもすぐに話したじゃないか」  え?………じゃあ、今は誰と?  私の表情から読み取ったのだろう。柳瀬がそっと呟くように言った。 「あの後、しばらくして聡子と付き合いだしたことを知って、早苗も納得したんじゃなかったのか?だから二人は結婚して、女の子も一人いる。幼稚園の年中さんだったかな」  聡子? 聡子と結婚? 聡子は去年会社の人と結婚したはず。隆也との間に女の子?それは私が生むはずだった智香?      過去を変えてしまった?私自らの手で……。  誰も悪くない。そう、誰も。    だけど、この虚脱感は何?  私の中では今も隆也は恋人で主人でパパなのに。
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