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なんか暗い照明。ベッドに裸で寝ている自分に気付いてびっくりした。さらに隣には同じように裸で、止めたはずの煙草をおいしくなさそうに吹かす隆也がいた。
なんで?なんで二人でこんなところにいるんだろう。
このどうしようもない恋愛に疲れたような自分と隆也をみて情けなくなった。
聡子を裏切ったの?私たち。たしか、女の子がいたはず。もう大きくなっているはずだ。何粒飲んだか分からなかったから計算ができなかった。
短くなった煙草をサイドテーブルに置いてある灰皿に押し付けて火を消して隆也が呟いた。
「なぁ、早苗。俺たちって結婚してたらよかったのかなぁ。聡子はきっと勘づいてる気がするけど何も言わないんだよなぁ。かえって辛いなぁ」
なぁ、なぁってこんな言い方する人じゃなかった、隆也は。なんか凄く寂しい。
それより、今の私はなんなのだ。仕事に疲れていて魔が差したのだろうか。親友の旦那を取るようなやつになり下がって。
あのあと、私は馬鹿馬鹿しいくらい軽い女になったとか。
すごいショックだった。
夢を持って仕事を続けていると思っていたのに。
やはり、私は肝心のところで弱い人間なのだ。隆也とはすぐに別れよう。今ならまだ傷は浅いかも。私も聡子も。
「隆也、今日で別れましょう。私たち違う道を選んだはずよ」
しれっと言う自分が嫌だった。そんな私を寂しそうに見つめる隆也はもっと嫌だった。
「ああ、そうしよう」
こんな言葉を聞くために未来に来たのか。
さっさと着替えて元の世界へ帰ろう。そして二度とこんな間違いをしないことを肝に銘じて生きていこう。
ピンポーン♪
この部屋のベルが鳴った。
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