まさかの夢

21/26
前へ
/73ページ
次へ
    黒かぁ。嫌な色だな。せめて金色とかだったらよかったのに。  なんかこれを飲んだらそのまま楽に死ねそうに思えた。  もうどうなってもかまわなかった。  私は黒いその一粒を手の平にとって眺めた。    これで終わるのかな。なにもかも。それでいいや。  ごくん。飲み込んだ。  途端に私は暗闇の中にすいこまれていったように感じた。ブラックホールにでもはいったのだろうか。  死の世界ってこんな感じ?音もしない。何も動かない。匂いすらしない。  私は怖くなった。本当に怖いというのはこういうことだ、と誰かに思い知らされているようだった。  勝手なもので、今度は死んだことを後悔している。死んだらおしまいだ、本当に。  こんな時に隆也と智香の顔が浮かんだ。 「隆也~、智香~」口をあけているのかよくわからないまま声を出してみた。   「………なえ」 遠くで小さな声がした。 「さなえ、早苗。大丈夫か?」  懐かしく、愛おしい声だった。その声に誘われるように目が開いた。
/73ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7人が本棚に入れています
本棚に追加