7人が本棚に入れています
本棚に追加
気がつくと時計の針は12時をさしていた。2時間ぐらいラベルを見ていたことになる。
そこで、ふっと笑ってしまった。誰かの悪戯だ。じゃなきゃ私がおかしいという事だ。あれこれ考えていたから疲れていたのかな。
でも、ラベルの文字に私は惹きつけられていた。
よく見ると、青粒と赤粒、黄色の粒は3分の一ずつはいっているようだ。
一粒でどれくらいの効果が出るのだろう。
未来は分からないから、過去からためしてみる? と、自分に問いかけてまた笑えてきた。こんなことがあるはずない……。
そう、今の自分の状況が幸せに思えなくて何かを変えてみたくて、でも変えられない現実があって……。
ただの睡眠薬か健康補助食品かもしれない。
隆也は製薬会社の研究所で働いている。だから、自分の体のための滋養強壮剤かもしれない。
元気になりそうな色なら赤かな? 私の好みだというだけだが。
私は赤い粒を一つ手の平に載せていた。
隆也が持って帰ってきたのだろう。さっきまで無かったのだから。
一つだけ飲んでみよう。隆也が持って帰ってくれた物なら大丈夫だろう。
私は隆也に確認したわけでもないのに、安易にそう思い込んだ。
でも、本当に過去に戻ったりしたらどうする?
いや、戻りたいのではないだろうか、今の私は。
非現実の世界を体験したい欲望を抑えきれないのかもしれない。
もし、過去へ戻れるなら……そんな誘惑に誘われるように手の平の赤い一粒を飲んだ。
ぶぅーーーーんと意識がとんだようだった。
最初のコメントを投稿しよう!