-かげろう-

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きみのくちからこぼれることばはどんなものだって ひろいあつめて かきあつめて それくらいだいじなんだけど しってる? きみのくちからつむがれるほかのどんな「だれか」のなまえなんてききたくない。 「ふぅん」 「それだけかよ」 「他になんか言いようがあるか? 俺は上位にたたれてお節介に諭されるのは大嫌いだ」 そう言うと理一は下唇をつきだして文句をこぼす。 「おまえわかってないなー。 ひとは笑うからすきっていわれるんだぜ? 望月先生とか… 飯塚先生…」 そこまでいうと首をぷるぷるふって 「さ、桜ちゃんも怒ってばっかだけど でも笑顔かわいいから俺桜ちゃんがすき」 「じゃあ…」 「おまえ俺に笑ってほしい?」 いつもわらって だからまわりからすきって かくれみの、みたいなえがお。 「そんなやつすきっていえるか?」 「じゃあこころからわらえばいい」 「…そういう問題じゃねぇだろ」 こころからわらえるなんてできやしないだろ。 そう言おうとして やめて めをふせた。 ふあんがつたわったみたいに きみのてがぼくのてに たったそれだけのはなし。 だけどそれだけで そのあとのかえりみちはうえをむいてあるいた。 つきのないみち。
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