‡ 3年後の私 ‡

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      「おめでとう。 ……山下陽さん、だって」 「うん。そうだよ?」 「照れる……」 「山下陽さん」 からかうように言いながら織人の手が伸びてきて、私の頭を撫でる。 ちらっと横目で見ると、今まで見たことないめちゃめちゃ可愛い顔で織人が笑ってる。 淡いブルーのサングラスごしなのが実に惜しい。 「えへへへ……」 「あはははっ──」 織人が私のへらへら笑いにつられて、声をあげて笑った。 陽気な笑い声が車内に響く。 私は自分から手を伸ばし、織人の左手を握った。 織人は優しく握り返してくれる。 自然に笑えている自分が、すごく愛しく思えた。 織人。 ありがとう。 私を好きになってくれてありがとう。 私、ずっと、ずっと織人を信じてついていくよ。 っていうか……。 織人と一緒に居るだけで幸せなんだから、そんな大げさな誓いはいらないか。 織人の手を握ったまま前を向く。 窓から、風と一緒に入り込む街路樹の匂い。 私は目を閉じて、春の空気を味わった。 桜の芽がほころぶ季節に。 私は『山下陽』になった。                 ── 終 ──      
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