問題編 SideーA

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 もともと喜怒哀楽の切り替えが早い上に、感情の起伏の揺れ幅も極端な由香里ちゃんだ。  私と春菜おばさんが平謝りするだけであっさりと機嫌を直してくれた。 「それでは由香里お嬢さま、お手伝いをお願いできますでしょうか?」 「うむ、何なりと申してみよ」  春菜おばさんが仰々しくもわざとらしい口調で請うと、由香里ちゃんも同じように返した後、互いにふふ、と笑い合う。  本当に仲の良い母娘である。  由香里ちゃんが手伝ったおかげだろうか、それからほとんど間を置かずに朝食が食卓に並べられた。 「いただきます」  私はまず目玉焼きにお箸を伸ばす。  完熟直前に固められた黄身は中央がとろりと柔らかく、けれど端には微かな弾力があり、申し分ない食感だった。  スープを飲めば、口中にコンソメの芳醇な旨味が広がり、柔らかに舌の上を通り過ぎていく。  若干薄めのスープは後味も穏やかで、さらに私の食欲を誘う。  相変わらず春菜おばさんの料理は絶品だ。 「お姉ちゃん、ジャムどれにする?」 「そうね、今日はブルーベリーにしようかな。目にも良いしね」  私の言葉に一瞬、二人が苦笑いを浮かべたような気配がした。
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