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実は中学生のころに一度だけ、由香里ちゃんに対抗して同じペースで食べようとした事があるんだけど、その時はやれコップは倒す、スープはこぼす、ウィンナーを刺したままのフォークでさらに自分のほっぺたを刺したりと散々な目にあってしまった。
テーブルの上を滅茶苦茶にした私を春菜おばさんは笑って許してくれたけど、それ以来私は食事ではマイペースを保つことを心がけている。
由香里ちゃんや春菜おばさんにとってはただの笑い話でしかなくても、私にとっては未だに素で笑えない苦い思い出だ。
とまあ、そんな若気の至りなんかを想起しつつも、私は春菜おばさんや由香里ちゃんと楽しく会話を弾ませながら朝食を堪能していた。
「おはよう」
男性特有の低い声が飛び込んで来た途端に、会話がピタリと止んだ。
それまで和やかだった食卓の空気がまるで霧散していくように感じられた。
「おはよう、あなた」
正面にいる春菜おばさんがまず一番に返す。
「……おはよう」
微妙な間を置いてから、由香里ちゃんがやや固い声を出す。
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