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冬独特の乾いた空気が身体の体温を奪ってゆく。
リョウの家からほどなく歩いた小川のほとり。
嫌がる彼を何とか宥めてここまで来たのはいいが……。
「うーん、やはり外套を着てても外は寒いな。大丈夫か?」
「大丈夫なわけないでしょう。」
水上を走る風も冷たいが、彼の態度もそれはそれは冷たいものだった。
(これは、やりすぎたか……?)
「こんな強引な人だとは思いませんでした。」
「悪かったよ。ほら、着物じゃ厚着しても寒いだろう?マフラーを貸してあげるから使いなさい。」
「……どうも。」
先程までの優美なお坊ちゃんはどこへ行ったのやら。
子供みたいに拗ねているリョウはマフラーを受け取る時さえ眼を合わせようとしない。
あの出来すぎた彼よりも、こちらが本当の彼にも見えるが……。
「でも俺の事がひとつ判ったじゃないか。強引な奴だって。ここへ来なかったら判らなかったかも知れないだろう?」
「あ……。」
「動かないと知り得ない事もある。」
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