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それから数時間。
俺とリョウは一言も話さず、お互いの息遣いと筆を走らせる音だけを聞いていた。
指先で足に触れれば太腿を露わにし、肩に触れれば背中を差し出す。
口に出さなくともリョウは俺の言いたい事を理解してくれた。
まぶた、首筋、臀部、足の裏、指先、性器までもリョウは躊躇う事無く肌をさらし、俺はそれらを花で埋め尽くした。
「……このまま、永遠に残せないのが残念だよ。」
「…………。」
「でも俺の目が、頭が、ずっと覚えてるから。君の顔も。声も。その椿に抱かれた身体も。ありがとう……良い作品が出来た……。」
全身を花で覆われて肩を震わせるリョウ。
そんな彼を見るのは辛いが、これが、俺の答えだった。
君を愛せない俺を許してくれとは言わない。
憎んでくれてもいい。
俺は嘘をつきたくないんだ。
だから、これが今の俺の素直な気持ちだ……。
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