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「それはさておいて、誠司。祭りだ」
八輝がグッと握り拳を作り、明後日の方向をみる。
いつも八輝は騒ぎたい時は祭りという言葉を持ち出して、皆を引き連れて馬鹿騒ぎをする。
過去の事例を挙げるとすれば枚挙にいとまがない。
「一人祭りってのは端からみると、なかなか悲しいもんだな」
「お前も来んだよ!」
「拒否する」
すると、ニヤァと八輝の口の端が吊り上がる。
「お前よ、天才マジシャン見たくねえ?」
マジシャンという言葉におおよその検討が付く。
恐らく、昨日のあのマジシャンだろう。
この手の噂話ほど八輝が好きなものはない。
「あぁ、立川駅前で女の子がやってるあれのことか?」
「そう!それ!なんだ知ってんのかよ」
「二週連続で買い物に付き合わされたからな。軽ーく遠目に見たが、外人さんだな。あれは。金髪だったし」
「可愛かったか!?」
「さあなぁ、遠目に見たから顔まではよく見えなかったなぁ」
それを聞いた八輝は数秒顎に手をやり考え、
「よっしゃ。今日の放課後ちっとひやかしに行くぞ」
「断る。大体平日までストリートでマジックやってんのかよ」
「そうらしいな、聞くに、あのマジックは本当に魔法使ってるんじゃないかと思うくらい凄いらしい。一見する価値は十分にあるぞ」
遠目にぼんやりと見ていたから気付かなかったが…しかし、そこまでの腕を持つマジシャンが一ヵ所に二週間もいるのも珍しいと思い、改めて、
「だが、断る!」
断言した。
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