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時計は0時をさしている。さすがに帰らなければいけない時間だ。
「もっと一緒にいたい」
いつもは我が儘をあまり言わないサヤに、そう言われてヒロの気持ちは揺らぐ。
「愛してるのはサヤだけだ」
今のヒロには他に掛けてあげられる言葉がなかった。どう考えても、これ以上帰らないのは危険だ。
「またすぐ来るから…待ってて」
サヤを力強く抱きしめる。待ってしか言えない自分が、自業自得なのに歯痒い。
体を離すとサヤに優しくキスをする。
サヤはいつも目をつぶっていた。
今日も…
現実を見たくないのかもしれない。
もしそうなら、そうさせているのは間違いなくヒロだ。
ヒロの胸の奥にチクりと何かが刺さった気がした…
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