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「今日は家にいるんだ」
パジャマ姿でテレビを見ていたヒロは、あからさまに怪訝な顔で振り返った。
「俺の家にいちゃ悪いのか?」
「何その言い方。あんただけの家とでも言いたいの?!」
「タエから言い出したんだろ…それにそんな事は言ってない!」
手元にあった新聞を、テーブルにたたき付ける。最近の会話は常にこんな状態で、会話なんだか喧嘩なんだか分からない。
「あんたが浮気してるからいけないのよ」
わなわなと体を震わせながら、タエコはヒロを睨みつけた。彼女の中では、ヒロが浮気をしたと認めた事になっているらしい。
「話にならないな」
「卑怯者!逃げるの?!」
「煙草買って来る」
パジャマに上着を羽織ると、そそくさと玄関から外に出た。
昼なのに空は暗く、空気が重い。
今の心の中を現しているようで、深いため息をついた。
もう、あの妻と一緒に暮らす勇気は俺にはないのかもしれない…
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