別れは唐突に

2/5
前へ
/27ページ
次へ
うやむやとした気持ちのままサヤの家に来たヒロは、じっとしてられず換気扇の下で煙草をふかしていた。     「ねぇ…ヒロは私と奥さんどっちが好きなの?」     いきなり核心に触れられて、ヒロの背中を冷や汗が流れる。心臓がバクバクと脈打つのが自分でもよく分かる。     「俺が愛してるのはサヤだけだよ」     うまく言葉にならず、サヤを後ろから優しく抱きしめた。     「じゃあ奥さんと離婚してよ」     顔は見えないがサヤの声は震えている。きっとすごい勇気を振り絞って言葉にしたんだろうなぁ…と、ヒロの胸の奥がキリキリと痛む。     「今すぐは無理だけど、うまくいってないからいつかは離婚すると思うよ」     一生懸命気持ちを伝えてくれるサヤに対して、ヒロが言える事はそれだけだった。 離婚を約束する事も出来ない… サヤと別れる事も出来ない… 自分のふがいなさに泣きそうになった。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加