84人が本棚に入れています
本棚に追加
うやむやとした気持ちのままサヤの家に来たヒロは、じっとしてられず換気扇の下で煙草をふかしていた。
「ねぇ…ヒロは私と奥さんどっちが好きなの?」
いきなり核心に触れられて、ヒロの背中を冷や汗が流れる。心臓がバクバクと脈打つのが自分でもよく分かる。
「俺が愛してるのはサヤだけだよ」
うまく言葉にならず、サヤを後ろから優しく抱きしめた。
「じゃあ奥さんと離婚してよ」
顔は見えないがサヤの声は震えている。きっとすごい勇気を振り絞って言葉にしたんだろうなぁ…と、ヒロの胸の奥がキリキリと痛む。
「今すぐは無理だけど、うまくいってないからいつかは離婚すると思うよ」
一生懸命気持ちを伝えてくれるサヤに対して、ヒロが言える事はそれだけだった。
離婚を約束する事も出来ない…
サヤと別れる事も出来ない…
自分のふがいなさに泣きそうになった。
最初のコメントを投稿しよう!