挨拶

2/2
前へ
/27ページ
次へ
玄関を開けた時の、サヤの笑顔が好きだ。安心したような嬉しいような…なんとも言えない笑顔を見せてくれる。     「お帰り」   「ただいま」     家じゃあんまり言わない挨拶も、サヤが相手だとすんなりと出てくる。     「今日は遅くまでいられるよ。昨日は淋しい想いをさせちゃったからね…」     時計を外すとテーブルの上に無造作に置く。サヤは一瞬嬉しそうな顔をしたが、すぐに悲しげな顔になる。     「優しいのね」   「意地悪な言い方だな」   「そう?」   「俺は弱いから…あんまりいじめると来なくなっちゃうぞ」     言った後で後悔した。こんな言い方したら、サヤが気にするに決まってるのに。 俺と居てサヤは幸せなんだろうか? 俺は優しい事なんか言えないし、いつも一緒に居れないのに…
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加