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俺がそんなセンチメンタルかつノスタルジックかつファンタジーな事を想い、暗澹たる気分で休み時間をすごしていると、おきまりのニヤケ面を浮かべた谷口がこちらに近づいて来た。
あんまりニヤケるな、アホみたいだぞ。いや、実際アホか。もういっそアホの谷口と名乗っちまえ。アホがそれほど似合うのは、お前と坂田師匠ぐらいなもんだぞ。
「ほっとけ」
そう言うと、谷口はニヤケ面をもう一段階引き上げた。
「しかしどうなのよ、キョン」
ちゃんと主語を付けろ。お前国語の成績悪いだろ?
「わかってんだろ。明日はバレンタインデーだぜ、バ・レ・ン・タ・イ・ン。どぅゆーあんだすたんど?」
谷口は俺の質問を無視すると今度は英語で聞いてきた。外国語を知らないものは母国語を知らない。これはどこのお偉いさんの箴言だったかな。とりあえず質問には答えてやろう。
「のぉーあいどんと」
「嘘付け」
嘘だよ。この時期にお前が振りそうな話題なら、見当はついてるさ。
「なら話は早いな。で、どうだ」
これ以上とぼけてみても話が一向に進まないので、素直に答えてやることにする。
「二個だな、運がよけりゃあ三個」
「ひゅー。そりゃ結構じゃねーか。長門、朝比奈さん、んで涼宮か」
「違うよ。母親、妹、で運がよくて朝比奈さんから」
「アホ、親族からもらう分を数に入れるな」
アホだと!たとえファルマの大定理を解いたのがお前だとしても、その言葉だけは言われたくないね。
「そう言うお前はどうなんだよ。何個もらえそうなんだ?」
「ふっふっふっ……聞いて驚くなよ」
笑うな、気持ち悪いんだよ。
「一個だ!」
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