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大声を出すな、いばるな、唾を飛ばすな。俺と変わんないじゃねーか。
谷口は指を左右に振りると古泉ばりの気障ったらしさで、
「チッ、チッ、チッ。わかってないな。数ではないのだよ、数では。いいか大切なのは愛情なのさ。愛する彼女の手づくりチョコ、それは千個の義理チョコより価値があるね」
と言った。
確かに千個義理チョコをもらっても意味ないよな、よほどの甘党でない限りそのうちの九百九十個は生ゴミに変化するだろうよ。
つまりそのチョコは義理チョコ十個分の価値しかないということだ。
「ひがむな、ひがむな。それに十個分だってたいしたもんだろ?」
アホの谷口はさらににやけ顔のレベルを上げた。第三形態、金髪の戦闘種族にやられちまえ。
他人の夢の話に匹敵するほどくだらない、谷口の彼女の自慢話を右耳から入れて、そのまま左耳から出していると、始業のチャイムが鳴り響いた。
これほど始業のチャイムが待ち遠しいと思ったことは、俺の十年に及ぶ学生生活の中でも初めてだ。終業のチャイムならいつも待ち遠しいけどな。
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