時は金なり

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時は金なり

 今日も昨日と変わらず、学校を休んだ。相変わらず、わたしはベッドの中にいる。クラスの担任がわたしを心配しているらしい…さっき、母親から少し聞いた。どうでもいいことだ。    わたしを「鬱病」と診断した医者は言っていた、「焦らずにゆっくりと治療していけば、治る病気ですから」。そんな言葉を思い出した。本当にそうなのだろうか。いつまでもこのままこうしていそうな気がする。    学業と今の状態の両方と付き合っていくことは、とても難しい。難しいから、学校に行かなくていい訳ではない。進級して、卒業して、進学して…そんな思いは、こころの片隅にだけれど、ちゃんと存在している。でも、わたしは時間が欲しかった。    時間が欲しくて、学校へは行かずにベッドの中にいる。最低でも、この中から抜け出さなくては。毎日この調子では、時間を無理やり作っている意味がない。    しかし、ベッドの中はいつもやさしい。見たくも聞きたくないものたちを遮断してくれるから。母親や父親、社会――何もかもが遠くに感じられる。わたしを疎ましいものたちから守ってくれる。でも、これはただ逃げているだけだということに気付いていた。    頭で理解していても、こころが動いてはくれない…身体は全く動かない。何もかもすぐに思い通りにはいきはしない、でもそこまでは誰も何も待ってくれない。   「焦ってはいけない、焦ってはいけない」    今まで難なくこなせていた物事に対して、急についていけなくなる。これが病気の症状のひとつなのだ。    そして、わたしはベッドの中から出られなくなっている。毎日、必要な時間だけが無言で過ぎていくだけだ。    時は金なり。今日は今日しかないし、明日は明日しかない。タイムマシンなんてないのだから。
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