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「隔離をしたものの、感染を止める術はないし、感染者を治療することは出来ない。そして今日、病院にいた全ての感染者は死亡したのだ。ただし、例外を除いてだが……」
私は再び彼の言葉を遮り、訊いた。
「例外……?」
「そう、例外……。君の娘さんだ。」
「娘が未知のウィルスに感染していたのか!!何故!どうして!?」
私は理性を失い、ただ叫び、彼に問いかけた。
「落ち着け!言っただろう例外だと……。おそらく娘さんはまだ生きているんだぞ」
私は動揺しながらも我に返った。落ち着いた私の姿を見ると再び彼は話し始めた。
「何故例外なのか……。確かに娘さんにウィルス反応があった。しかし、反応があっただけだった。発症していなかったのだ」
「発症……?」
「ウィルスには潜伏期間があり、それを過ぎると発症する。まだ、確実に言えるわけではないが、このウィルスもそうで、短いが潜伏期間はある」
「つまり、娘はいつ発症するか判らないということか?」
「いや、違う」
「では、何なんだ!もったいぶらず教えろよ!」
本部長は私から顔を逸らした、そして再び目を合わせると口を開いた。
「彼女はウィルスを持っているが発症はしない。未知のウィルスが病院内で出た理由。それは、彼女から未知のウィルスが作り出され、ばらまかれているからなのだよ」
「……嘘だ!そんなわけない、私の娘が……。そんな事あるものか!」
私は大声を出し全力で否定した。
「……嘘をつくものか、国家の一大事に嘘などつけるわけがないだろう!」
確かに、わざわざ嘘をつく理由はない。ただ認めたくないだけ。私は分かっていた、全てが真実なのだと。逃れられない真実なのだと。
私は幸せだと思っていた。娘が産まれ心の底から幸せだと思っていた。しかし、全ては脆く崩れ去ったのだ。
私は言葉を失った。
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