うまれる

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「まだ失望するな、これから君にしてもらわないといけない事があるのだからな。いや、君にしか出来ないと言うべきか」 失望のどん底にいた私は、返事をする事もなく、ただ黙り込んでいた。 「取りあえず、このまま話を続ける。時間がないのでな」   そう言うと、本部長は話を続けた。   「どこまで話したか……。そう、君の娘さんがウィルスを撒き散らしているというところまでだ。……医師達はそれを発見し、国に報告したのだ。報告があり我々は病院へと向かった。病院へ到着し、中に入るがどうも様子がおかしい。人の気配がしなかったのだ。我々は人を探した。しかし、時既に遅し。病院にいた全ての人が死んでいたのだ……。報告からわずか一時間半。その間に医師、看護師、患者、病院にいた全ての人が感染し、死に至っている。医師達の報告とはかなり食い違っているが、かなりの感染力だよ。我々は感染を食い止めるため、元凶を探した。しかし、見つからなかったのだ、母親共々。我々は恐怖したよ、既にウィルスの発生源が外に出てしまったことに。我々の予想では、君の奥さんが娘さんを外に連れだしたと考えている。……そこで、君に頼みたいことがあるのだ」   私は顔を少し上げた。 「先程も言ったが、奥さんと娘さんを探して連れてきて欲しいのだ。我々だけでは早急に探し出す事は出来ない。国を救うため、いや、全世界を救うため、君の協力が必要なのだ」   「娘をここに連れてきたらお前達は、どうするつもりだ」   絶望の淵にいた私は今にも途切れそうな声で言った。
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