さがす

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ナツたちがそこにいるという確証はない、しかし自信はあった。理由は分からないが、俗に言う『絆』というやつか? などと考えているうちに廃村への入口に到着した。   この廃村は、ダム建設の為に埋め立てられたが、一部だけダムに入らずすんだ家々があった。新たに道路や橋を造られなかった為、人はそこから移り住み、その箇所だけ陸の孤島となってしまったらしいのだ。 そこへ行くには、ここからさらに1時間半ほど歩かなくてはいけない。 私は段ボール箱を開け、中からウィルスから身を守る防護服を取り出した。昨日貰ってきたものだ。 それをぎこちなく着ると、私は獣道を歩き出した。人の歩いた痕跡を探しながら歩いたが、昨晩の雨で痕跡らしきものは見つからなかった。 私はこの道を歩きながら、あの日の事を思い出した。 ナツとの思い出。 私とナツが初めてこの場所に来たときの事を……。 あれは晴天の日、時期は今頃だった。まだ私とナツが出会って間もない頃、初めて二人で遊んだ日だった。 その日夕食を済ますと、行くところがなくなり、暇になった私達は車でドライブをしていた。何気なしに幽霊の話をしていた私達は、この話で盛り上がり、心霊スポットに行こうということになった。そして、この時心霊スポットとして最も有名だったのがここだったのだ。 一時間半歩いてここまで来たが結局心霊現象に会うことはなく、帰ろうと振り返るとそこには遠くでキラキラ輝く街があったのだ。 私達は暫く言葉を失い絶景を眺めていたのを覚えている。 その時、心霊スポットだという恐怖心は全て吹っ飛んでしまい、綺麗だという気持ちしかなかった。 この日からここは怖い場所ではなくなり。楽しい場所、思い出の場所へと変わっていった。プロポーズもこの場所でしたくらいだ。 そんな事を考えている内に視界が広がってきた。 私は息をのみ足を進めた。
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