うまれる

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10月6日 今日我が子が産まれた。元気な女の子である。 名前はアキ、この名前は私が妻と結婚する前から決めていた名前だ。   妻の名前はナツ。そして、私の名前がハルオ。もうおわかりだと思うが、春夏秋冬、季節の名前からきている。もう一人産まれたなら、次は冬にちなんだ名前を付けようと既に決めている。 さて、アキが産まれてから私達は幸せの絶頂だった。しかし、誰も気付かない所で既に異変は起きていたのだ。   アキが産まれた翌日、アキの担当の看護師に連絡が取れないと、病院内では大騒ぎになっていた。事故に巻き込まれたのか、はたまた誘拐か、いやいやただのサボりだ、など様々な憶測が流れていた。 私は只大変だなと思っていた。 そして次の日、アキとナツの様子を見に行くと、担当の看護師が変わっていた。その看護師に理由を訊ねてみると、どうやら病気にかかり、暫く病院を休むとの事だった。その時は特に不思議に思わず、改めて新しい看護師さんに挨拶をした。 次の日、今日も病院へ行くとナツがある噂話をしてくれた。 「ねぇ、アナタ知ってる?なんか、ここの病院赤ちゃんが立て続けに4人も亡くなっているそうよ。しかも、皆前日まで健康だったんだって」   私はアキの事を心配しつつ、不安がるナツを元気付かせるためこう言った。   「大丈夫だよ。噂だって、家の子は健康だよ」   「そうよね、アキに限ってそういう事無いわよね」 先刻よりは声に張りはあったが、無理をしているのがわかった。私はナツを早々に休ませ、眠りに就くのを待ってから、家に帰った。
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