さがす

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ナツ、アキ、どこにいる。私は息を途切らせながら二人を探した。   何か聴こえる、何だ? 私は息を調え、耳を四方に傾けた。   「ハァ、ハァ、ハァ」   微かだが荒い呼吸が聞こえた。 誰かいる。   私は呼吸が聞こえる方にゆっくり、忍び寄った。   「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」   だんだんと呼吸の音が大きくなる。           草むらに何かを抱き抱えしゃがみこんでいる人が見える! 私にはわかった、あれはナツだと。   「ナツ!アキ!」   私はナツとアキの名前を呼ぶと、全速力で駆け寄った。 しかし、反応がない。もしかして……! 私はナツの肩を掴み身体を起こした。       ナツの顔が見えた。 ひどく怯えたナツの顔が。肩も震え、視点も定まっていない。  しかし、アキだけは離さないと言わんばかりに強く抱きしめていた。   「ナツ!おい!大丈夫か?ハルオだ!アキは無事なのか?」   視点が定まっていなかった、目が徐々に定まっていく。 そしてナツは私の顔を見ると怯えた顔が歪み、涙を流した。そして私に抱きつくと声を上げて泣いた。 私は暫くナツを抱きしめた。           一時間程たっただろうか、ナツもようやく落ち着いてきた。 そこで私はナツに訊いてみた。 「なぁ、アキを抱っこしていいか?」   「うん」   ナツは私にアキを渡した。私はアキを抱き抱える。   「違う、アキはまだ首が座ってないんだからしっかり頭を抱えなきゃ」   「あっ!アキ、ごめんな」   私はアキの頭を抱えた。 アキは無垢な笑顔で笑っている。   「この人がパパでちゅよ~」   妻がアキに私の事を教えようとする。 幸せだ。これが、子どもを抱きしめた喜びなのか……。  ずっとこのままならいいのに。私はウィルスの事を忘れ、僅かな幸せを噛み締めていた。
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